すってんころりん

一月ほど前、友人宅で5段ほどの階段を踏み外し(カーペット敷きの上、スリッパで滑った)しりもちをついた。首がカックンとなったのを感じ、しばし寝そべって衝撃をゆるめた。友人宅の猫ちゃんが、心配そうに見に来てくれた。(こういうときの犬猫の存在は本当にありがたい。)ゆっくり起き上がって、たいした故障もないなとおもって帰宅したのだが、その後なんとなく調子が悪く、風邪で寝込んだ後、首の後ろが痛くなって、久しぶりにカイロにいくと、「頚椎の一番が、左に半インチずれてます」との事。軽いムチ打ちになってたのである。
 今回はボーっとしていてころんだんだけど、思い起こせば98年の夏、ランチタイムのウエイトレスをしていて、派手にすっころんだことがあった。その日は、知り合いがお客さんできてくれたのでなんとなくはしゃいでいたのか、リクエストのあった、「ガリ」を小皿に入れて右手に持ち急いでテーブルに向かうところで、水がこぼれていた床に気づかず滑って、すってんころりん。しかし、この時は、まるで受身をとったのと同じ、あっという間に天井を見ていた状態でしかもガリはこぼさず、手のひらの上。そして、本人もあっという間に起き上がってニコニコしていたので、周りのスタッフ・お客さんともに「だいじょうぶー?」と言うのも気味悪そうであった。考えてみると、ウェイトレスって特に忙しい時には自分の受け持ちテーブル、キッチンとかなり広い範囲に気を配って、ぺリパーソナルスペースが広がっているので、自分の使い方も自然と効率よくなる傾向にある。昔、ある古武道の先生から、現代で武術の訓練をしているのは、タクシーの運ちゃんとウエイターだ、と聞いたことがあるが、確かにぐるりに注意を払いつつ手元の仕事に集中するという意味でうなづける言葉だ。で、ちなみにこの時は、一切故障はなしであった。
 10年ほどやったウエイトレスをやめて丸三年になる。私にとって、「人生の大学」と言ってもいいくらいいろんなことを学んだ職場であり、つらいこと、楽しいこと、びっくりしたこと、いろいろあったが、すってんころりんは「ちょっと恥ずかしい、栄光の一瞬」だったんだなあと、今は思う。