何もない静かなクリスマス

5週間の日本滞在から帰ると、ハリソンからのサプライズ・プレゼントが待っていた。新しいカーペットと、新しく塗られた壁と。カーペットは曇り日の入り江のような少しくすんだ青磁色で、壁は明るい目のグレイ。目になれないうちは何だかくすんでるなという印象だったが、絵でも何でも色彩を際立たせて見せる効果があると説明された。なるほどなんとなく、かけてある絵の色がよく見えてくる。二階にあったすべての「モノ」は箱に放り込まれて階下のスタジオスペースいっぱいに詰め込まれてあった。で、帰国以来時差ボケしている暇もなくこれらの「モノ」たちと対決している。
なるべく何もない空間という要素をとっておきたい。
・・・物ひとつない空虚な部屋にはさんさんとした太陽の光が差してあのような明るさがあるではないか。幸福もまた、足掻きをやめた空虚な心にこそ、とどまり宿るのである。それを知りながらなおかつ足掻きをやめることを知らないものは、座ったままで走ることをやめないもの、永遠に休息を知らないものである。(荘子、内篇第四 人間世篇)
 と、荘子のいう「虚室」とまではとても無理だけれど、ちょっととっておくくらいはできる。どこに、どう「虚」をもってくるか。そんなことを考えて毎日楽しんでいる。こんなプレゼントなら、いつも自分に上げられるな、永遠の暇つぶしって感じだ。

クリスマスの朝はいつもとても静か。今朝は霜が真っ白におりて、たださんさんと陽がさしている。