ピラミッド・ハウスとジョセフのこと

shokoza2006-04-14

ピラミッド・ハウスを始めて訪れたのは、1990年の終わり近くのこと。この家は、ハリソンの母の家だったのである。そして、ハリソンの母スター・フライヤー(彼女のスーフィーネーム)の恋人で、最期を看取ったのが、ピラミッドの製作者、ジョセフだった。10年間、病院にはいかず、乳がんと付き合いながら、スーフィズムチベット仏教を学び、セラピストとしてこの家で開業していた。そういう彼女を支えて、このふるい家のあちこちを、なおしたり建て増ししたりしてきたのが、親子ほど年が違うジョセフであった。がんの末期には、雪の日にも彼女を背負って、馬先生の診療所にかよっていたそうである。そういうわけで、なくなるときに、この家はジョセフが相続したのであった。
 はじめてあったときのジョセフは、ほとんど首がないくらい、肩があがっていた。大変な緊張のパターンである。こちらも引いてしまったが、向こうも人を寄せ付けない感じだった。そして次に彼にばったり会ったのは、キャシーの個人レッスンをうけているときだった。3年ほどの月日が経過していて、前のパターンはだいぶ和らぎ、「レッスンはどう?」なんてすれ違い様に気軽に言葉を交わした。しばらくして、ルシアがレッスンに来るようになる。ルシアとジョセフは、親友だったのだ。 
 あれから10年以上の時が流れた。去年の秋、ルシアのバースデイ・パーティーに呼ばれて、久しぶりにジョセフに会った。頭はだいぶ薄くなったが、首が全部ある。落ち着いてゆったりとした、存在感。彼は今、「聖なる音楽のアンサンブル」というグループをやっていて、CDをつくっているところ。ルシアも声で参加している。

 「このピラミッドの下で眠ると、すごい夢をみるんだって。一度つれてってあげるね。」と出会った頃のハリソンにいわれて、「うわー素敵」とおもったものだが、とうとう実現せず、そのことをルシアにはなしたら「いつでもとまりにきていいよ」といってくれた。が、他所のうちまでわざわざ、夢を見に行きたくないな。という風に自分が変わってしまっていた。